ビットトレントは通信を効率的に行うために様々な種類の通信方式が使われます。
ピア間通信
ピアとはファイルのダウンロードやアップロードを行うトレントネットワークに参加しているユーザーのことを指します。
ピア間通信は、ファイルを共有している異なるクライアント(ピア)同士が直接データを交換する方法です。
ダウンロード中のピアは、アップロード中のピアからファイルの断片を取得し、アップロード中のピアはダウンロード中のピアに断片を提供します。
この通信方法はビットトレントの最も基本的な仕組みで、ファイルの高速なダウンロードと共有を可能にします。
ダウンロードが高速化する理由は下記です。
負荷分散
通常のダウンロード処理を行う場合は1つの中央集権的なサーバーに複数のファイルが配置されており、その1つのサーバーに対して無数のユーザーがダウンロード処理を行うためにアクセスしに来るため、負荷が高くなり、スムーズな処理ができなくなることがあります。
並列処理
中央集権的なサーバーからダウンロードする場合、1つのファイルを1箇所からダウンロードします。
トレントを利用する場合は複数のPCから断片的なファイルを同時にダウンロードすることが出来ます。
そのため、通常のダウンロード処理より高速でファイルがダウンロード出来ます。
また、中央集権的なサーバーに依存しない処理なので、ファイルが消えてしまうという可能性が低いのもトレントの魅力です。
トラッカー通信
トラッカー通信はピア間通信を行う際に必要な通信です。
トラッカーはビットトレントのネットワーク内でピアを追跡し、誰がどのファイルをダウンロードしているかを管理します。
クライアントは定期的にトラッカーに接続して情報を更新し、新しいピアの情報を取得します。
DHT通信(分散ハッシュテーブル通信)
DHT通信は、トラッカーなしでピア同士を探し、接続するための分散型システムです。
DHTはハッシュテーブルと呼ばれるデータ構造を使用し、特定のピアを見つけるためのキー(ハッシュ値)を使用します。
ピアはこのDHTネットワークに参加し、特定のハッシュ値に対応するピアの情報を検索します。
DHTを使用することで、トラッカーに依存せずにピアを見つけ、ファイル共有を行うことができます。
DHTのデメリット
DHTのデメリットは全てのトレントクライアントがDHT通信をサポートしているわけではないことです。
DHTを使用しているクライアントしかネットワークに参加できないので、通常のトラッカーに依存したピア間通信と比べてピアが少ない可能性があります。
トラッカー通信とDHT通信の併用
トラッカー通信とDHT通信は異なるアプローチでピアを発見しようとする通信方式です。
トラッカーに接続してピアを探すことと、DHTネットワークからピアを探すことは平行して行うことが出来ます。
したがって、トラッカーサーバーがダウンしている場合やトラッカー情報が古い場合はDHTが使われ、DHTに参加していないピアが多い場合はトラッカーが使われます。
このようにトラッカー通信とDHT通信を平行することでダウンロード速度の最適化や、安定したダウンロードが出来るようになります。
マグネットリンク
マグネットリンクはDHTネットワークを通じてファイルをダウンロードするためのリンク形式の一つです。
通常はダウンロードのために必要な情報を含むtorrentファイルと呼ばれるものをWebサイトなどから入手し、Torrentクライアントに渡すことで、内容が参照され、目的のファイルのダウンロードが開始されます。
マグネットリンクを利用する場合はリンクの文字列をクライアントに渡すことで、DHTネットワーク内のピアの情報を受け取ることができ、目的のファイルをダウンロードをすることが出来ます。
PEX (Peer Exchange)
PEXは、既に接続しているピアから他のピアの情報を取得する方法です。
例えば、AというクライアントがBとCという2つのクライアントに接続している場合、AはBやCから他の接続しているピアの情報を取得することができます。
これにより、トラッカーやDHTなしで、新しいピアを発見することができます。
LPD (Local Peer Discovery)
LPDは、同じローカルネットワーク内のピアを発見するためのプロトコルです。
ローカルネットワーク内でのデータ転送は、インターネットを介した転送よりもはるかに高速です。
したがって、同じローカルネットワーク内にあるピアとの接続は、ダウンロード速度の向上に寄与することが多いです。
これらのピア発見方法は、ビットトレントの効率と速度を最大化するために、トラッカーやDHTと組み合わせて使用されます。
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